Lá pelota vuelve a casa ーメキシコ!
会員レポート
長岡 誠
スペイン語通訳 ・翻訳者
「ボール、故郷に帰る(Lá pelota vuelve a casa)」
ワールドカップ期間中のメキシコの街中でそんなコピーを目にしました。こんなキャッチコピーでワールドカップを迎えられる国が少し羨ましい。
もちろん1970年、1986年に続いて3回目のワールドカップ開催が帰ってきた、ということもあるのですが、「故郷に帰ってきた」という表現には世界最古の球技のルーツのひとつがメキシコのメソアメリカ文明にある、とされていることへのユーモアと誇りが感じられます。
私の滞在した6月下旬はメキシコ代表の試合もあったのでいろいろなイベントが開催され大盛り上がりでした。首都のメキシコ市では、メキシコ代表の試合を見るパブリックビューイングも大がかりな規模で市内各所に設置されています。市の中心部にあるソカロ広場には大きなテレビが設置され、周囲をボード壁で囲んだ巨大な空間で試合を観戦しますが数万人(一説に8万人)が基本全員立ち見の押し合い圧し合いなので気合いが必要です。慣れていない観光客だとスリなど犯罪被害にあう可能性もありますので、現地在住者と一緒に行くのが無難です。いかなる時であれメキシコ代表が試合に勝ったときにはサポーターが独立記念塔の周囲に集まって延々とお祭り騒ぎをするのがメキシコ代表サポの伝統と言いますか仕来りなのでありまして、この日も数十万人が集まったようです。後日の決勝ラウンド1回戦後のお祭り騒ぎではついに死者が出る痛ましい事態になってしまったようですが、凱歌の集まりが無くなることはなさそうです。メキシコ連邦政府の治安機関の調査によればワールドカップ開催期間中の殺人事件の発生件数が前年同期比で33%強下がった、との記事が新聞に出ていました。みんな家でテレビの前に釘付けになる時間が増えるので、通りすがりの強盗など屋外型犯罪は行いづらくなる、ということなのかもしれません。
一方で、ワールドカップ期間中に家庭内暴力の事例が増加する傾向があるというユネスコの報告を引用した記事も見ました。試合の結果に一喜一憂して感情的なリミッターが外れることもそうでしょうが、過度のアルコール摂取、賭け事による経済的プレッシャーといった要因も家庭内暴力の増加の要因である、と国連機関の報告は述べているのだそうです。これが本当なら、ワールドカップ期間中は屋外での犯罪は減る反面、屋内での犯罪的事件は増えるので暴力の総数はあまり変わんない、という、エネルギー保存の法則的な力が働いているのかもしれません。
私が1996年から20年以上を暮らしたメキシコはいつでも温かく迎えてくれます。今回も1週間という短い滞在の中で多くの友達たちに再会し、延べ1000㎞以上の距離を陸路で移動して久しぶりの“里帰り”を満喫しました。
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